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カビ毒とキノコの毒って、化学物質的には違うものなのでしょうか?
それとも、おなじ菌類が生産するものだから、同じ毒物の系統に属するものもあるのですか?

汚染米問題で、一時期名前が挙がっていたアフラトキシン(カビ毒)ですが、自然界最強の発がん物質(しかも調理では分解できない)と聞いています。
ツキヨタケに含まれていたりするものは、神経毒みたいなものじゃないかと思ってますが、テングタケとかみたいに、すぐ「食中毒」として症状が出るようなものも、ちょっと発がん物質と違いそうですよね。
でもカビ毒は、(カビたものはわざわざたくさん食べないから)いつの間にか蓄積されて、慢性的に害の出るもの、キノコは(食べられるものと間違えて)一気に摂取するから、すぐに急性症状が出るもの。だから本質的な化学物質としては、実は同系統のもの…ということも、あるのかな?と思いまして。
カメノコの化学式はさっぱり理解できないので、ホントに素朴な疑問レベルなのですが、ここを検索してみたら、カビ毒研究の経験者もおられるご様子。
もし、カビ毒とキノコ毒はぜんぜん違うよ、ということであれば、初心者でもその辺がわかりそうな本、その他の情報とかも教えていただけると嬉しいです。

  • 質問者:アルカロイドは全然違いますよね
  • 質問日時:2008-10-18 23:40:46
  • 0

カビ毒は、総称して「マイコトキシン」と呼ばれてます。構造がわかってるものだけで
300種類あります。
そのなかのアフラトキシンは、強い発ガン性物質でもあるけれど、急性中毒も起こしますね。
昏睡、手足のけいれん、肝機能障害等で、記録にある近年の最大死者数は、
この急性中毒で125人(ケニア)だそうです。
同じカビ毒でも麦類赤かび病菌は、強い中毒症状を起こしますが、
発ガン性は今のところ確認されてません。
だから、カビ毒=発ガン物質という認識だけではなく、キノコと同じように
急性中毒だけのものもある、と覚えておいてください。

キノコも菌類で、カビと近い生物です。キノコの毒は、いろんなタイプがあって、
構造式だと、アミノ酸に近いものが多いですが、アミノ酸とは全然違う物もあります。
カビ毒のようにひとくくりにはできないほど、構造が違うと考えてくださいね。
一番怖いのは、8種類のアミノ酸が合わさってできたα-アマニチンで、
発ガン性はまだ確認されてませんけど、アフラトキシンと同じように、加熱調理では
分解出来ません。遅効性の毒なので、食べてすぐ吐くとか下すとかの症状もないです。
からだ全体にまわったあたりでやっと毒が効き始めて、まずは下痢とかのよくある症状、
その後、いったん落ち着いたように見えて、10日くらいたった頃に、細胞を破壊します。
腎不全、肝不全、昏睡、呼吸困難・・・の症状が出たら5割は死亡、運良く助かっても
後遺症が残ることが多いです。
カビ毒と同じように、やはりからだの解毒作用の心臓部である、腎臓・肝臓に負担が
かかって死に至ることが多いです。
アミノ酸っていうと「からだにいい」イメージがあるけど、怖いですよね〜
タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケ。このへん食べると、確実にこれです。

化学構造は違いますけれど、どっちのがより怖いとか、発ガン性が強い方が怖いとか
いうものではないですよ。毒は、効き目が早くても遅くても、やっぱり毒です。
構造は違っても、最終的にダメージを受けるのは、腎臓・肝臓等の、人体の
解毒を受け持つ内臓器官です。

アルカロイドはいわゆる「神経毒」として知られてますが、構造のなかにアミノ酸を持つ物もあります。
ただ、アミノ酸だけでできてるわけではないですね。アミノ酸を持たないアルカロイドも
あります。ただし、その原料はほぼすべて、植物性のアミノ酸由来でしょう。
カフェインもニコチンもアルカロイドですけど、実は、薬になる植物の薬用成分も、
ほとんどがアルカロイドなんです。エフェドリンというとダイエット薬被害を
思い浮かべる人も多いですけど、薬として、咳止め薬等に普通に入ってます。
ベラドンナに含まれる超猛毒のはずのアトロピンは、適正に使うと、サリン中毒の
解毒剤にもなります。

カビ毒の話に戻りますと、ペニシリンという結核の特効薬の原料物質発見に
役立ったのは、青カビです。ペニシリンの発見のおかげで、
肺結核が不治の病でなくなりました。(今はさらに研究がすすんで、
ペニシリンよりももっと効く薬も開発されてます)

カビもキノコも、どちらも昔から毒としても、薬としても
興味を持たれている物質です。
つまり、薬と毒の起源は同じです。そして、漢方薬やハーブサプリメントで
誤解している人が多いんですが、自然のものだけでできているから安全とか、
副作用が少ないということは絶対にありません。

カビ毒とキノコ毒の話からちょっとそれましたが、自然由来の毒物は、
構造の違いにかかわらず、毒にもなり、薬にもなるというお話でした。
構造の違いは研究者に任せておけばいいので、消費者としては、
自然成分だから安全・安心という言葉に騙されないようにしてください。
特に、漢方薬や天然サプリは安全という神話に騙されないでください。
ホントに安全だったら、医師の処方も薬剤師さんも薬局も必要ないし、
薬局以外の場所でふつうに買える・・・というか、薬やサプリとして売る意味がないんで、
市場に流通することはないです。


  • 回答者:美衣 (質問から2時間後)
  • 2
この回答の満足度
  
とても参考になり、非常に満足しました。回答ありがとうございました。
お礼コメント

カビ毒、といえばほぼひとくくりにはできるけど、キノコの毒、というとまったく違うし、その中でもいろいろとあるということなのですね。
そしてそれぞれ急性中毒のものもあるし、遅効性のものもある。へええ…!
毒キノコって、事典とかだと案外、誰でも知っているテングタケ類みたいなものしか、載ってなかったりするのですよね。細かく載せるとかえって、悪用が心配されてるのかな、と思うくらい。
だからそういうのって、どういうふうに調べればいいのか、よくわからなかったのです。
アトロピン!推理小説ファンなので、時々作中で見ます。目薬として点眼すると、瞳孔が開くのですよね。何の毒物だったか忘れましたが、「瞳孔が収縮する」その特徴をごまかすために、犯人が点眼したという話でした。…今思うと、死後ならなにか、関係ない気もしますが。
でもサリン中毒の症状は、瞳孔が収縮することですから、解毒剤として使われるのはすごくよく、わかります。

実は、アロマテラピー(エッセンシャルオイル)にも興味があるので、「自然成分だから安心・安全」という言葉には、逆に注意するようにしているのです。
ミントには実は、微量ながら神経毒の成分も含まれているし、フローラル系は女性ホルモンを整える=妊娠初期には流産の危険もあるかもしれないもの。天然成分だからこそ「効能」があるし、逆に危険もあるってことを、知らずに使っていることって、案外ありますものね。
本当に、毒にも薬にもなるものとして、ちゃんと調べて使わなくては!
まさに求めていた回答という形でご回答いただきまして、本当に勉強になりました。ありがとうございました!

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